相続が発生すると、相続財産の総額に応じて相続税が課される場合があります。しかし、事前の準備次第で相続税を抑えることが可能です。この記事では、代表的かつ実践的な「相続税対策の基本」を4つに分けて解説します。
贈与による相続税対策
■ 暦年贈与(年間110万円まで非課税)
最も基本的な相続税対策は、生前に家族へ財産を毎年少しずつ贈与することです。1人につき年間110万円以内の贈与であれば贈与税がかかりません。これを数年間継続すれば、相続財産そのものを大きく圧縮できます。
例: 子ども3人に10年間贈与 → 110万円 × 3人 × 10年 = 3,300万円を非課税で移転可能。
■ 教育資金・結婚資金の一括贈与特例
一定の条件下では、子や孫への「教育資金(最大1,500万円)」「結婚・子育て資金(最大1,000万円)」の一括贈与が非課税となる制度があります(信託口座利用などが必要)。
■ 贈与契約書は必須
金銭を口座振込で渡すだけでは、税務署に贈与と認められない可能性があります。贈与のたびに契約書を作成し、署名・押印して保管しましょう。
生命保険の活用
生命保険は、遺族の生活を守ると同時に相続税の非課税枠を活かせる重要な資産形成手段です。
■ 500万円 × 法定相続人の数まで非課税
死亡保険金のうち、法定相続人1人あたり500万円まで非課税になります。たとえば相続人が3人なら、1,500万円まで非課税で保険金を受け取れるため、大きな節税につながります。
■ 納税資金・遺産分割の補填にも有効
相続税の支払いに現金が必要な場合でも、生命保険金はスムーズに支給されるため、納税トラブルを防ぐ手段になります。また、特定の相続人に重点的に財産を渡したい場合の手段にもなります。
家族信託の導入
認知症リスクや複雑な相続問題を見据えた対策として、**家族信託(民事信託)**が注目を集めています。
■ 認知症リスクへの備え
財産の所有者が認知症になると、預金や不動産の管理が困難になります。家族信託を使えば、信頼する家族に財産の管理を委ねる契約を事前に結ぶことができ、資産凍結リスクを回避できます。
■ 遺言代用信託で分割トラブルを防止
遺言と同じように、誰に・いつ・何を渡すかを契約に明記できるのが「遺言代用型信託」。相続人同士の争いを避けるための有効な手段となっています。
不動産の活用
不動産は相続税対策の柱のひとつですが、活用方法次第で評価額を大きく下げることができます。
■ 借家権付き建物で評価額を圧縮
不動産を賃貸に出していると、借家権割合や借地権割合が控除されるため、評価額が下がり相続税が抑えられます。賃貸併用住宅の活用も有効です。
■ 小規模宅地等の特例
亡くなった人の居住用の土地を相続する場合、一定の条件を満たせば最大80%の評価減が適用されます(上限330㎡)。これは非常に強力な節税制度です。
まとめ:複合的に対策することが重要
相続税対策は、1つの手段だけに頼るのではなく、贈与・保険・信託・不動産を組み合わせて行うことで、より確実で安全な資産承継が可能になります。自分や家族のライフスタイル・資産状況に合ったプランを立て、必要に応じて税理士や司法書士の専門家の助けも得ましょう。