はじめに
死亡後の公的手続きは、人が亡くなった後に残されたご遺族にとって、故人の人生を締めくくるうえで避けて通れない大切なものです。しかし、その手続きは複雑かつ多岐にわたり、それぞれに異なる期限や窓口が定められているため、何から着手すべきか迷い、大きな不安を抱くことも少なくありません。
本書は、そうしたご遺族の皆様が、死亡後の公的手続きを含む煩雑な手続きの全体像を整理し、喫緊のタスクから順に取り組めるよう、実務的な道しるべとなることを目的としています。単なる手続きの羅列に留まらず、なぜその手続きが必要なのか、どのような書類をどこで取得するのか、各手続きがどのように相互に関連しているのか、といった実践的な側面を、専門家としての知見を交えて平易に解説します。
本書は、ご逝去直後から始まり、四十九日、そして相続税申告の期限である10カ月後まで、時間軸に沿って構成されています。ご自身が直面している状況の章から読み進めていただくことで、最も優先すべき事項を把握し、手続きの迷路に陥ることなく、故人様を偲ぶ時間を確保するための一助となることを願っております。
第一部:死後すぐに取り組むべき最優先事項(死亡日から7日〜14日以内)
第一章:最初の公的手続き「死亡届」の提出と期限
死亡届は公的手続きの出発点
公的な手続きはすべて、故人様のご逝去を公的に証明する「死亡届」の提出から始まります。これは、ご遺族が行うべき手続きの中で、最も期限が短く、最も優先度の高いタスクです。
死亡届の提出期限と提出先
死亡届は、医師が作成する「死亡診断書」または警察官が作成する「死体検案書」と一体になった様式で、故人様が亡くなった事実を知った日から7日以内に、市区町村役場に提出する必要があります。国外で亡くなられた場合は3カ月以内です。この期限を過ぎると過料が科せられる可能性があるため、葬儀社に代行を依頼するなどして速やかに対応することが一般的です。
死亡届を提出できるのは、故人の親族、同居者、家主などであり、提出先は故人の本籍地、死亡地、または届出人の所在地のいずれかの市区町村役場です。手続きには死亡届(死亡診断書または死体検案書と一体になった様式)の原本が必要です。届出人の印鑑は原則不要ですが、訂正が生じた場合に備えて持参することが推奨されます。後見人や補助人などが届け出る場合は、その資格を証明する書類の原本も必要です。
火葬・埋葬許可証の交付
死亡届が受理されると、その後のあらゆる公的手続きの出発点となる「火葬・埋葬許可証」が交付されます。この許可証がないと、遺体を火葬・埋葬することはできません。火葬が終了すると、火葬場でこの許可証に証明印が押され「埋葬許可証」となります。これは墓地へ納骨する際に必要となる重要な書類ですので、紛失しないよう大切に保管しなければなりません。
死亡届がもたらす連鎖的な影響
この「死亡届」の提出は、単一の手続きのように見えますが、実はその後の多くの公的手続きの連鎖反応を引き起こす「トリガー」となります。届出が受理されると、故人様の戸籍に死亡の事実が記載されるとともに、住民票が自動的に抹消され「住民票の除票」となります。これにより、日本年金機構など一部の公的機関には情報が連携されるため、手続きが簡略化される場合があります。
しかし、死亡届を提出した場所と故人様の本籍地が異なる場合、情報が本籍地の市区町村に伝達されるまでに1週間以上かかることがあります。このタイムラグにより、後日必要になる戸籍謄本や住民票の除票がすぐに取得できず、その後の手続きが滞る原因となり得ます。死亡届の提出は、後続の手続きをスムーズに進めるための第一歩として、迅速かつ慎重に行うことが求められます。
第二章:健康保険・介護保険の手続き
健康保険・介護保険資格の失効と返却手続き
故人様が加入していた健康保険や介護保険の資格は、亡くなった時点で失効します。これに伴い、保険証や各種認定証の返却手続きが必要です。手続きの窓口や方法は、故人の職業や加入状況によって異なります。
国民健康保険・後期高齢者医療制度の場合
国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた方が亡くなられた場合、死亡届の提出後、故人の保険証を市区町村の担当窓口に返却します。
- 期限:死亡日から14日以内
- 必要書類:国民健康保険被保険者証、高齢受給者証、限度額適用認定証など、交付されていたすべての証。世帯主が亡くなった場合は、同じ世帯の他の保険証も必要。
また、故人が世帯主であった場合は「世帯主変更届」の提出が必要です。これは死亡届と同時に行うのが一般的です。
さらに、国民健康保険加入者が亡くなった場合、葬儀を行った方(喪主)には市区町村から「葬祭費」が支給されます。
- 申請期限:死亡日から2年以内
- 必要書類:故人の保険証、喪主と故人の関係がわかる書類(会葬御礼状、葬儀代領収書、埋火葬許可証の写しなど)、喪主の印鑑(認印)、振込先口座の通帳、喪主の本人確認書類
被用者保険(協会けんぽ・共済組合等)の場合
会社員や公務員、またはその扶養家族として被用者保険に加入していた方が亡くなった場合、健康保険の資格喪失手続きは故人が勤めていた事業主(会社)を通じて行われます。
- ご遺族は故人の健康保険証(扶養家族分も含む)を会社の総務担当者へ返却する必要があります。
この場合、社会保険組合から葬儀を行った方(喪主)に「埋葬料」が支給されます。
- 申請期限:死亡日から2年以内
- 注意点:「埋葬料」と国民健康保険から支給される「葬祭費」は重複して受け取ることはできません。
介護保険の場合
65歳以上で介護保険に加入していた方が亡くなった場合も、被保険者証の返却が必要です。
- 期限:死亡日から14日以内
- 提出先:故人様の住所地の市区町村にある介護保険課または区民事務所
- 必要書類:介護保険被保険者証、要介護認定を受けていた場合は負担割合証や限度額認定証も含む
加えて、以下の精算手続きが発生する場合があります。
未支給の「高額介護サービス費」 → 相続人が請求可能
納めすぎた介護保険料 → 還付手続き
未払いの介護保険料 → 納付書が送付される
第三章:年金受給停止の手続きと未支給年金の請求
年金支給停止の必要性と期限
年金を受給していた方が亡くなった場合、年金を受ける権利が失われるため、年金の支給を停止する手続きが必要です。この手続きは、故人様が国民年金を受給していたか、厚生年金を受給していたかで提出期限が異なります。国民年金は死亡日から14日以内、厚生年金は死亡日から10日以内と、いずれも短い期限が設定されています。
「受給権者死亡届(報告書)」を提出せず放置すると、不正受給とみなされ、年金の返還を求められることがあるため、速やかな対応が非常に重要です。なお、故人の個人番号(マイナンバー)が日本年金機構に登録されている場合は、原則として死亡届の提出が不要となります。
未支給年金の仕組みと請求手続き
日本の公的年金は、2カ月に一度、前月と前々月の分が振り込まれる後払い方式です。そのため、年金を受給していた方がいつ亡くなっても、必ず「未支給年金」が発生します。この未支給年金は、故人と生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます。単に支給停止の手続きを行うだけでは受け取れず、別途「未支給年金請求」の手続きが必要です。
未支給年金を請求できる遺族には順位が定められており、故人様と生計を同じくしていた以下の親族の順です。
(1)配偶者、(2)子、(3)父母、(4)孫、(5)祖父母、(6)兄弟姉妹、(7)その他の3親等内の親族。
年金関連手続きの窓口と必要書類
これらの年金関連手続きの窓口は、原則として年金事務所または街角の年金相談センターです。必要書類には、
- 故人の年金証書
- 故人と請求者の続柄を示す戸籍謄本(法定相続情報一覧図の写しでも可)
- 生計を同じくしていたことを証明する書類(故人の住民票の除票および請求者の世帯全員の住民票の写しなど)
- 請求者の振込先金融機関の通帳
が必要です。故人と請求者が別世帯の場合は、「生計同一関係に関する申立書」も求められます。請求者が配偶者または遺族年金を請求する子であれば、マイナンバーを記入することで戸籍謄本の添付を省略できます。
遺族年金の受給可能性
故人様がまだ年金を受給する前で、国民年金や厚生年金の被保険者だった場合は、遺族が「遺族年金」を受給できる可能性があります。故人様が自営業者だったか、会社員・公務員だったかによって、請求できる年金の種類や受給資格が異なります。遺族年金は、ご遺族のその後の生活を支える重要な収入源となるため、受給資格の有無を必ず確認すべきです。
なお、未支給年金は受け取った人の「一時所得」に該当し、支給金を含む一時所得の合計額が50万円を超える場合は確定申告が必要となる場合があります。
全体像の把握が重要
このように、年金の手続きは「支給停止」「未支給年金請求」「遺族年金請求」という、それぞれ異なる目的を持つ手続きが同時に、かつ階層的に存在します。そのため、全体像を整理し、優先順位を理解して取り組むことが大切です。
第四章:住民登録の変更とマイナンバーカードの取り扱い
住民登録上の変更手続き
死亡届が提出され、故人の住民票が抹消されると、それに伴う住民登録上の変更手続きが必要となります。
世帯主変更届の提出
故人が世帯主であった場合、残された世帯員は新しい世帯主を届け出る「世帯主変更届」を、死亡日から14日以内に市区町村役場に提出しなければなりません。ただし、故人様が亡くなった後、世帯に残る人が1人だけとなる場合など、新しい世帯主が自明である場合は、この届出は不要とされています。
この届出を正当な理由なく怠ると、5万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。
手続きには以下が必要です。
- 届出人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 印鑑
- 委任状(代理人が手続きする場合)
故人のマイナンバーカードと通知カード
故人様のマイナンバーカードおよび通知カードは、死亡届が提出され住民票が抹消されると、自動的に失効し使用できなくなります。法律上、これらのカードの返納は義務付けられていません。
しかし、後々の相続手続きで故人様のマイナンバーが必要となる場合があるため、しばらくは保管しておくことが推奨されます。不要になった場合は、ICチップ部分をハサミで切るなどして破棄します。
第二部:四十九日を目安に整理する手続き(死亡日から3ヶ月〜4ヶ月以内)
第五章:故人の所得に対する準確定申告
準確定申告とは
故人様が亡くなられた年、その年の1月1日から亡くなられた日までの所得について、故人に代わって相続人が行う確定申告を「準確定申告」といいます。
提出期限と義務
この申告は、相続人全員に課される「共同の義務」であり、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、延滞税や加算税が課される可能性があるため、早期の着手が必要です。
申告義務が発生するケース
申告義務があるかどうかは、故人の生前の職業や所得状況によって判断されます。例えば、
- 個人事業主だった場合
- 年金収入と給与収入があった場合
などが該当します。
準確定申告の手続きと提出先
準確定申告の手続きは、相続人全員が連署して申告書を作成し、故人の住所地を管轄する税務署に提出します。
必要書類の例:
- 確定申告書
- 被相続人の源泉徴収票や控除証明書
- 医療費の領収書
- 相続人が複数いる場合は 「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」
- 相続人全員のマイナンバー関係書類(本人確認書類)
還付金の受け取りを代表者が行う場合は、委任状も必要です。
手続き上の負担と対応策
準確定申告は相続人全員の共同義務であるという性質が、心理的・手続き的に大きな負担となる場合があります。相続人が遠方に住んでいたり、関係が希薄であったりする場合、全員の署名を得るための調整が難航することもあります。
このため、相続人の間で代表者を決め、効率的に手続きを進める工夫が求められます。
第六章:遺産の調査と相続方法の確定
遺産調査の必要性とタイミング
準確定申告の期限とほぼ同時期に、遺産全体の調査を行い、相続方法を確定する重要な手続きを進めます。これは、相続税申告の有無を判断するためだけでなく、故人の負債がプラスの財産を上回る場合に備えるためにも不可欠です。
遺言書の有無の確認
遺産調査の第一歩は、故人様が遺言書を残していなかったかを確認することです。自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所で「検認」の手続きが必要となります。
相続人の確定
次に、故人様の「出生から死亡までの全ての戸籍謄本」を収集し、全ての法定相続人を確定させます。故人様が転籍や婚姻、離婚を繰り返していた場合、複数の市区町村にわたる戸籍を遡って収集する必要があり、時間と手間がかかります。
戸籍謄本の収集には以下が必要です。
- 窓口へ行く人の本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、健康保険証など)
- 委任状(代理人が請求する場合)
財産の調査
相続人の確定と並行して、故人様が遺した財産を調査します。預貯金、不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借入金や未払金といったマイナスの財産も全て特定することが重要です。公共料金の請求書や銀行の取引履歴は、故人が所有していた財産や契約の「手がかり」となり、調査の助けになります。
相続放棄と限定承認
この財産調査の結果、故人様の負債がプラスの財産を上回ることが判明した場合、ご遺族は「相続放棄」または「限定承認」を検討します。
- 相続放棄:故人様の権利や義務を一切引き継がない(単独で可能)
- 限定承認:プラスの財産の範囲内で負債を清算(相続人全員で行う必要あり)
手続きの期限と注意点
「相続放棄」または「限定承認」の手続きは、故人様が亡くなった事実を知った日から3カ月以内という厳格な期限が設けられています。この期間中に安易に故人の財産に手をつけてしまうと、全ての権利義務を引き継ぐ「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるリスクがあります。
この時間的制約と情報不足の中で迅速な判断を迫られるため、必要に応じて早めに弁護士や司法書士といった専門家に相談することが望ましいとされています。
第三部:相続・税務の長期的な手続き(死亡日から10ヶ月以内)
第七章:相続税の申告と納税
相続税申告の要否の判断基準
相続税の申告が必要か否かは、故人様の遺した遺産総額が「基礎控除額」を超えるかどうかで決まります。
相続税の基礎控除額の計算式:
3000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
例:法定相続人が3人の場合
3000万円 + (600万円 × 3) = 4800万円
→ 遺産総額がこの金額を超えなければ、原則として相続税の申告は不要です。
相続税の申告・納税期限
相続税の申告と納税の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内です。期限を過ぎると延滞税や加算税が発生するため、早めの準備が必要です。
特例適用による申告義務
基礎控除額以下で申告不要と思われる場合でも、特例を利用する際には申告が必須となります。
代表的な特例:
- 配偶者の税額軽減:配偶者が相続する財産に対し、税額を大幅に軽減できる制度
- 小規模宅地等の特例:故人様の自宅や事業用の土地の評価額を大幅に減額できる制度
これらの特例は申告を行わなければ適用されず、その結果多額の相続税を支払う可能性があります。
専門家への相談のすすめ
相続税の申告義務は単純な遺産総額だけでは判断できない場合があります。特例の適用可否を含め、安易に自己判断せず、税理士など専門家に相談して申告の必要性を確認することが強く推奨されます。
第八章:故人名義の財産の名義変更と解約
遺産分割協議後の名義変更手続き
相続人全員で遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書が作成されたら、いよいよ故人様名義の財産を相続人の名義に変更する手続きに進みます。
銀行口座の凍結解除と払い戻し
故人様の死亡を銀行が知ると、その口座は凍結され、原則として一切の入出金ができなくなります。
口座の凍結を解除し、預金を引き出すためには以下の書類が必要です。
- 遺言書または遺産分割協議書
- 故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
また、緊急で葬儀費用などが必要な場合は、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を利用できます。
- 上限:1つの金融機関につき最大150万円
- 必要書類:故人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、払い戻しを受ける相続人の印鑑証明書と実印
公共料金等の契約者変更・解約
電気、ガス、水道、固定電話、携帯電話などの契約は、各契約会社に連絡して名義変更または解約を行います。
- 手続き方法:電話やインターネットで完結することも多いが、書類のやり取りが必要な場合もある
- 必要書類:死亡診断書や戸籍謄本(相続関係証明)、新契約者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)、名義変更依頼書、口座振替依頼書など
不動産の名義変更(相続登記)
故人様名義の不動産を相続する場合は、法務局で「相続登記」の手続きを行います。必要書類は以下の通りです。
- 故人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 故人の住民票の除票または戸籍の附票
- 遺産分割協議書(遺言書がない場合)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産を相続する人の住民票
- 固定資産評価証明書
- 登記申請書
自動車の所有者変更・抹消手続き
故人様が所有していた自動車も相続財産に含まれます。遺産分割協議で相続人を決めた後、陸運支局や軽自動車検査協会で名義変更または抹消を行います。
普通自動車の場合:
- 車検証
- 故人の死亡の事実と相続人全員がわかる戸籍謄本
- 遺産分割協議書(代表者が相続する場合)または相続人全員の譲渡証明書
- 相続人全員の印鑑証明書と実印(または委任状+譲渡証明書)
- 新所有者の印鑑証明書と実印(または委任状)
- 新所有者の自動車保管場所証明書(車庫証明)
軽自動車の場合:
- 車検証
- 故人の戸籍謄本
- 新所有者の住民票
※自動車ローンが残っている場合は、ローン完済または所有権解除の手続きが必要です。。
第四部:生活再建に向けた諸手続き
第九章:各種給付金・支援制度の活用
給付金請求の重要性
死亡後の公的手続きには、故人様を送り出した後の生活を支えるための各種給付金の請求手続きも含まれます。これらは能動的に申請しなければ受け取れないため、見落としがないよう確認することが重要です。
生命保険金の請求
故人様が生命保険に加入していた場合、保険金受取人が保険会社に連絡して請求手続きを行います。
必要書類の例:
- 故人の死亡診断書の写し
- 戸籍謄本
- 保険証券
- 保険金請求書
高額療養費など未支給分の請求
故人様が生前、高額な医療費を支払っていた場合、高額療養費制度や各種医療費助成制度の適用により、後日払い戻しを受けられることがあります。まだ請求されていなかった未支給分は、相続人が請求可能です。
必要書類の例:
- 相続代表者の本人確認書類
- 預金通帳
- 認印
- 医療機関の領収書
故人の職業による給付金の違い
故人様の職業によって、ご遺族が受け取れる年金や給付金は異なります。
- 会社員:遺族厚生年金、遺族基礎年金
- 自営業者:遺族基礎年金
- 業務中や通勤中の事故による死亡:労災保険の遺族年金(給付が手厚い)
これらの制度は、生活の大きな支えとなるため、該当するかどうかを必ず確認しておくことが重要です。
第十章:各自治体が提供するご遺族サポート窓口の活用
自治体による遺族支援サービス
近年、多くの自治体で、ご遺族の負担を軽減するための支援サービスが提供されています。例えば、福岡市では各区役所に「ご遺族サポート窓口」が設置されており、手続きの案内や必要書類の確認をサポートしています。
ワンストップサービスの導入
これらの窓口では、事前予約制で複数の部署の手続きを一つの窓口でまとめて案内してもらえる「ワンストップサービス」を提供している場合もあります。これにより、ご遺族は区役所内を何度も回る手間を省き、効率的に手続きを進めることができます。
心理的な負担軽減の効果
こうした窓口は、「どこに、何を持って行けばよいか」という根本的な不安に対し、明確な道筋を示してくれます。単なる情報提供に留まらず、ご遺族の心理的な負担を軽減し、行政手続きの迷路に陥ることを避けるための非常に価値あるサービスです。
利用のすすめ
居住する自治体で同様のサービスがないかどうか、ウェブサイトや電話で確認してみることを強くお勧めします。自治体によっては予約制や対応時間に制限があるため、早めの確認が安心につながります。
付録:手続きに役立つ情報一覧
手続き別チェックリスト
手続き項目 | 目安時期 | 手続きする人 | 窓口・提出先 | 主な必要書類 |
死亡届の提出 | 7日以内 | 親族等 | 市区町村役場 | 死亡届(死亡診断書と一体) |
火葬・埋葬許可証の取得 | 7日以内 | 親族等 | 市区町村役場 | 死亡届提出時に交付 |
年金受給停止届の提出 | 10日/14日以内 | 親族等 | 年金事務所等 | 故人の年金証書、死亡の事実を証明する書類 |
健康保険証の返却 | 14日以内 | 親族等 | 市区町村役場または事業主 | 故人の健康保険証、高齢受給者証、限度額適用認定証など |
介護保険証の返却 | 14日以内 | 親族等 | 市区町村役場 | 故人の介護保険被保険者証、負担割合証、限度額認定証など |
世帯主変更届の提出 | 14日以内 | 世帯員 | 市区町村役場 | 届出人の本人確認書類、印鑑(代理人の場合、委任状) |
準確定申告 | 4ヶ月以内 | 相続人全員 | 故人の住所地を管轄する税務署 | 確定申告書、故人の源泉徴収票、控除証明書、医療費領収書、相続人全員のマイナンバー関係書類(本人確認書類) |
相続放棄・限定承認 | 3ヶ月以内 | 相続人 | 家庭裁判所 | 戸籍謄本、住民票の除票、収入印紙等 |
相続税の申告 | 10ヶ月以内 | 相続人全員 | 故人の住所地を管轄する税務署 | 遺産分割協議書、戸籍謄本、財産評価に関する書類等 |
生命保険金の請求 | 3〜5年以内 | 保険金受取人 | 保険会社 | 死亡診断書の写し、故人の戸籍謄本、保険証券、保険金請求書など |
葬祭費/埋葬料の申請 | 2年以内 | 喪主等 | 市区町村役場または事業主 | 故人の保険証、葬儀代領収書、振込先口座情報、喪主の本人確認書類 |
手続きに共通して必要な書類
公的な手続きでは、故人様やご遺族に関する様々な証明書が共通して必要となります。これらを事前にまとめて取得しておくことで、その後の手続きを円滑に進めることができます。
書類名 | 取得目的 | 取得先 | 補足事項 |
---|---|---|---|
死亡診断書(写し) | 死亡の証明 | 病院から交付 | 各種給付金や保険金請求時に必要となる場合があるため、原本を複数枚コピーしておくことが推奨されます。 |
戸籍謄本 | 故人様とご遺族の関係の証明 | 故人の本籍地の市区町村役場 | 多くの相続手続きで「出生から死亡までの連続した戸籍」が必要となります。本籍地の異動がある場合は、過去に遡って複数の役場に請求が必要です。請求には本人確認書類が必要です。 |
住民票の除票 | 故人様の死亡時の住所と本籍の証明 | 故人の住所地の市区町村役場 | 死亡届提出後に自動的に作成されます。取得には本人確認書類が必要です。 |
印鑑証明書 | 遺産分割協議書の証明等 | 住所地の市区町村役場 | 遺産分割協議書への押印や自動車の名義変更手続きなどに必要。有効期限(多くは3カ月以内)があるため、使用するタイミングに合わせて取得します。 |
遺産分割協議書 | 遺産の分割方法の証明 | – | 故人の財産の名義変更や相続税申告に必須の書類です。相続人全員の実印押印が必要です。 |
故人の年金証書 | 年金関連手続きの証明 | 故人の自宅等 | 年金受給停止、未支給年金請求時に必要です。紛失した場合は再発行手続きが必要です。 |
本人確認書類 | 各種手続きにおける身元の証明 | – | 運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、健康保険証などが該当します。 |
申請者の預金通帳 | 給付金等の振込先証明 | – | 葬祭費や高額療養費などの請求時に必要となります。 |
委任状 | 代理人による手続きの証明 | – | 代理人が手続きを行う場合に必要です。 |
用語集
- 準確定申告(じゅんかくていしんこく):故人様が亡くなられた年、1月1日から死亡日までの所得を、相続人が代わりに申告・納税する手続き。
- 相続放棄(そうぞくほうき):故人の財産を一切引き継がないこと。家庭裁判所での手続きが必要で、相続を知った日から3カ月以内が期限。
- 限定承認(げんていしょうにん):故人のプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を清算すること。相続人全員で家庭裁判所に申し立てる手続き。
- 戸籍の附票(こせきのふひょう):戸籍が作られてから(または入籍してから)現在までの住所の履歴が記録されている書類。不動産登記などで、戸籍上の住所と登記簿上の住所のつながりを証明する際に用いられます。
- マイナンバーカード:行政手続きにおける個人番号を証明する身分証明書。故人が亡くなると自動的に失効しますが、相続手続きで番号が必要となる場合があるため、一定期間保管が推奨されます。