家族の逝去後、なぜ「すぐにお金」が必要になるのか
大切な方を亡くされた直後、深い悲しみの中で立ち止まる暇もなく、現実的な問題が次々と押し寄せてきます。その最たるものが「お金」の問題です。
「故人の預金が十分にあるから大丈夫」と考えていた方でも、いざその時を迎えると、銀行口座が凍結されて1円も引き出せなくなる現実に直面します。葬儀費用、病院への未払い代金、当面の生活費……。これらは待ってくれません。
「手元の現金が足りない」「どうやって支払えばいいのか」とパニックになりそうな時こそ、まずは深呼吸をして、この記事を読み進めてください。あなたが今すべきこと、そして利用できる制度を一つずつ整理していきましょう。
死亡直後に発生する「急ぎの支出」チェックリスト
まずは、どのような名目でお金が必要になるのかを整理します。優先順位をつけて確認してみましょう。
1. 病院への入院費・診療代(即日〜数日以内)
亡くなった場所が病院の場合、退院時(遺体の搬送時)までに精算を求められることが一般的です。特に長期入院だった場合は、数十万円単位のまとまった金額になることもあります。
2. 葬儀関連の諸費用(即日〜1週間以内)
葬儀社への支払いは1週間以内が多いですが、以下のものは「現金」で即座に必要になります。
- 火葬料(数千円〜数万円。公営の場合は当日現金払いが多い)
- 宗教者へのお布施(葬儀当日。数万円〜数十万円)
- 遺体搬送やドライアイス等の実費
3. 当面の生活費(即日〜数ヶ月)
故人が家計の大部分を支えていた場合、公共料金の引き落としが止まったり、家族の生活費そのものが不足したりする事態が起こります。
【最優先】銀行口座が凍結されたときの「仮払い制度」
2019年の民法改正により、遺産分割協議が終わる前でも故人の預貯金を引き出せる「預貯金の仮払い制度」が創設されました。これが最も現実的な解決策となります。
制度の仕組みと引き出せる上限額
この制度には、裁判所を通さずに銀行の窓口で直接手続きができる「直接払い」があります。引き出せる金額の計算式は以下の通りです。
[死亡時の預貯金額]×[1/3]×[払い戻しを受ける相続人の法定相続分]
ただし、一つの金融機関から引き出せる上限は150万円までと決められています。例えば、A銀行に600万円の預金があり、相続人が配偶者のみ(相続分1/1)の場合、計算上は200万円となりますが、上限ルールにより150万円まで引き出せます。
手続きに必要な書類(一例)
銀行によって多少異なりますが、一般的に以下の書類を揃えれば、数日から1週間程度で現金が手に入ります。
- 故人の除籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 払い戻しを希望する相続人の印鑑証明書
「すぐに必要」な場合は、まず取引銀行に「仮払い制度を利用したい」と電話で伝えてみましょう。
現金がない場合に検討すべき「支払い」の工夫
制度を利用しても書類が揃うまでに数日かかります。その間の支払いを乗り切るための工夫を紹介します。
1. クレジットカード払いの活用
多くの病院や葬儀社ではクレジットカード払いが可能です。支払いを1ヶ月先送りにできるため、その間に保険金の請求や預貯金の仮払い手続きを進める時間が稼げます。リボ払いや分割払いの設定があれば、月々の負担を一時的に下げることも可能です。
2. 葬儀ローンの利用
葬儀社が提携している信販会社のローンです。葬儀費用の見積もり段階で申し込むことができ、審査が通れば一括での現金用意は不要になります。
3. 自治体からの給付金(葬祭費・埋葬料)
国民健康保険なら「葬祭費(3万〜7万円)」、社会保険なら「埋葬料(5万円)」が支給されます。これらは後払いですが、立て替えてくれた親族への返済資金として計算できます。
【ケーススタディ】現金不足で困った遺族の体験談
ここで、実際に資金不足に悩んだAさんのケースを見てみましょう。
Aさん(50代・主婦)の体験:
「夫が急逝し、銀行口座がすぐに止まってしまいました。手元の現金は5万円ほど。病院の支払いで15万円、さらにお通夜のお布施で20万円が必要と言われ、真っ青になりました。」
解決策:
「まず、病院には事情を話してクレジットカードで支払いました。葬儀社の方にも正直に『今現金がない』と伝えたところ、葬儀本体の費用は後日の銀行振込で良いと言ってくれました。お布施については、私の実家の両親に事情を話し、1週間だけ立て替えてもらいました。その間に夫の銀行で仮払い手続きを行い、150万円を確保。すぐに両親へ返済し、残りを葬儀社への支払いに充てることができました。」
Aさんのように、「正直に相談すること」と「支払い方法を使い分けること」で、最悪の事態は回避できます。
「お金が入る予定はあるが、今すぐ現金がない」方へ
ここまで読んで、「制度があるのは分かったけれど、書類を集める時間さえない」「親戚にも頼めない」という方もいらっしゃるでしょう。
特に、以下のような状況ではありませんか?
- あと1ヶ月すれば、生命保険金が300万円振り込まれる
- 故人の未払い給与や退職金が入る見込みがある
- 相続した家を売却する準備を進めている
このように「確実に入るお金はあるが、数週間〜数ヶ月のタイムラグがある」という状態を乗り切るための手段が「つなぎ資金」の確保です。
個人ができる「つなぎ資金」の作り方
まずは、銀行のカードローンやキャッシングなどを検討するのが一般的です。「借金」という言葉に抵抗があるかもしれませんが、「保険金が入ったらすぐに全額返す」という短期的な利用であれば、利息負担も最小限に抑えられ、精神的な余裕を得るための有効な手段となります。
また、最近ではスマホで完結する少額融資サービスもあり、窓口に行く時間がない遺族にとっては選択肢の一つとなっています。
事業を運営されている場合の資金繰り対策
もし、亡くなった方が個人事業主であったり、あなたが経営者として葬儀費用と事業資金の両方を工面しなければならない場合、事態はより切実です。
事業用の支払期限は待ってくれません。法人の口座凍結や、代表者変更に伴う銀行融資のストップなどが重なると、葬儀どころか事業の存続に関わります。
「事業者の場合」の特殊な選択肢
銀行融資を待つ余裕がない事業主の方にとって、借入以外のつなぎ資金対策として「ファクタリング」という選択肢があります。
ファクタリングは、すでに行い終わった仕事の「売掛金(請求書)」を専門業者に買い取ってもらうことで、入金日より前に現金化する仕組みです。これは借金ではないため、個人の相続状況に左右されにくく、最短即日で事業資金を確保できます。
「事業の資金を葬儀に回してしまい、仕入れができない」「従業員の給料が払えない」といった最悪の連鎖を防ぐために、こうした手段があることを覚えておいて損はありません。
まとめ|一人で抱え込まず、適切な「出口」を選びましょう
大切な人を失った直後に、お金のことで頭を悩ませるのは本当に辛いことです。しかし、今回ご紹介したように、解決策は必ずあります。
- 預貯金の仮払い制度で、まずまとまった現金を確保する。
- クレジットカードやローンを使い、支払いのタイミングを後ろにずらす。
- つなぎ資金という考え方を持ち、入金予定(保険金など)までの期間を賢く埋める。
お金の不安が解消されれば、ようやく故人を偲ぶための穏やかな時間を持つことができます。まずは、今あなたが抱えている不安が「どの制度で解決できるのか」を知ることから始めてみませんか?
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