遺言書とは何か?
遺言書とは、死後に自分の財産や思いを伝えるための法的文書です。
法的に有効な遺言書を作成することで、遺された家族間のトラブル防止や、自分の意思をしっかりと残すことができます。
日本の民法では、主に以下の3種類の方式が定められています。
自筆証書遺言とは?
概要
遺言者がすべてを自筆で書く遺言書です。2020年の法改正により、一部にパソコン作成が可能になりました(財産目録に限る)。
メリット
- 費用がかからず、自宅でも簡単に作成できる
- 思い立った時にすぐ書ける
- 内容が自由でプライバシーが守られる
デメリット
- 書式ミスや要件不足で無効になる可能性
- 家族に発見されず執行されないことも
- 相続開始後に家庭裁判所での「検認」が必要
改正法のポイント(2020年施行)
- 財産目録をパソコンで作成可能に
- ただし署名・押印・日付の記載は依然として手書きが必要
公正証書遺言とは?
概要
公証役場の公証人に依頼し、証人2名の立会いのもと作成する遺言です。
メリット
- 法的に確実で無効になりにくい
- 原本は公証役場に保管され、紛失や改ざんのリスクがない
- 家庭裁判所の検認が不要
デメリット
- 公証人・証人への手数料が発生(作成費用は1〜数万円)
- 証人を2人用意する必要がある(守秘義務あり)
- 内容を完全に第三者に見られるためプライバシーに配慮が必要
秘密証書遺言とは?
概要
内容を秘密にしたまま公証人に封印を認証してもらう方法。現在はあまり一般的ではありません。
メリット
- 内容を他人に知られずに済む
- 公証人による日付・本人確認が行われる
デメリット
- 書き方のミスで無効になる恐れ
- 自筆証書と同様に「家庭裁判所の検認」が必要
- 実務上ほとんど用いられない
遺言書の比較表
項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
---|---|---|---|
作成者 | 本人 | 公証人 + 証人2名 | 本人 |
作成費用 | 0円 | 数万円 | 公証人手数料 |
保管方法 | 自宅など | 公証役場 | 自宅など |
プライバシー | 保たれやすい | やや開示される | 非常に高い |
裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
有効性の信頼性 | 低〜中 | 高 | 低 |
遺言書の保管方法と補足制度
法務局での「自筆証書遺言保管制度」(2020年スタート)
- 法務局で自筆証書遺言を有料(3,900円)で保管
- 紛失・改ざんリスクの回避が可能
- 家庭裁判所の検認が不要になる(手続きが円滑)
どの遺言書を選ぶべきか?
状況例 | 推奨される遺言書 |
---|---|
費用をかけたくない | 自筆証書遺言(法務局保管制度と併用がおすすめ) |
財産が多く複雑 | 公正証書遺言 |
内容を誰にも知られたくない | 秘密証書遺言(実務的には非推奨) |
専門家への相談も視野に入れて
遺言書の作成は「形式さえ守れば誰でもできる」と思われがちですが、相続のトラブル回避には正確な知識が不可欠です。
- 弁護士(遺産分割トラブルに強い)
- 司法書士(登記や法務局手続きに強い)
- 行政書士(遺言書作成のサポート)
などの専門家に相談することで、より確実な遺言書の作成が可能になります。
まとめ
遺言書は、残された家族のトラブル防止や、想いをきちんと伝えるための大切な終活手段です。
「何を・誰に・どう残すか」を明確にし、法的に有効な形で記しておくことが、円満な相続の第一歩になります。