遺言書の作成|相続トラブルを防ぐための最も確実な終活の手段
遺言書の作成は、相続に関するトラブルを未然に防ぐための最も強力な手段です。エンディングノートにも財産や思いを記すことはできますが、法的効力を持つのは「遺言書」だけです。残された家族が迷わず、安心して相続手続きを行えるよう、終活の一環として遺言書の準備をおすすめします。
遺言書の主な種類
種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
自筆証書遺言 | 自分の手で全文を書く | 費用がかからない、すぐに作れる | 法的不備のリスクが高い、紛失や改ざんの恐れ |
公正証書遺言 | 公証人と証人2名の立会いで作成 | 法的ミスの心配なし、原本を公証役場で保管 | 手数料がかかる、手続きがやや面倒 |
秘密証書遺言 | 内容を秘密にしつつ証人を立てる形式 | 内容の秘匿性が高い | 実務ではあまり使われない、不備のリスクあり |
遺言書に記載すべき主な内容
- 相続人の指定(法定相続と異なる分配も可能)
- 特定の財産の分与先
- 付言事項(家族への思いや希望など)
- 遺言執行者の指定(弁護士などの第三者が望ましい)
遺言書とエンディングノートの違い
項目 | 遺言書 | エンディングノート |
---|---|---|
法的効力 | あり | なし |
主な目的 | 相続財産の分配 | 気持ちや希望の記録 |
推奨される対象 | 相続人が複数いる方、特別な意思がある方 | すべての人(特に高齢者や独居の方) |
🔷 法定相続とは?
法定相続とは、遺言書がない場合や遺言で分け方が指定されていない場合に、民法で定められた相続人とその取り分(=法定相続分)に従って財産を分ける制度です。
法定相続人の範囲と順位
相続人は順位によって決まります。先順位の人がいると、後順位の人は原則として相続権を持ちません。
順位 | 相続人 | 説明 |
---|---|---|
第1順位 | 子(実子・養子)と配偶者 | 子がいれば、親・兄弟は相続しない |
第2順位 | 両親など直系尊属と配偶者 | 子がいない場合、親や祖父母が相続 |
第3順位 | 兄弟姉妹と配偶者 | 子も親もいない場合に兄弟姉妹が相続 |
番外 | 配偶者は常に相続人(他の順位と一緒) | 配偶者だけは常に相続人に含まれる |
法定相続分の割合(代表的な例)
相続人の組み合わせ | 配偶者 | 子 | 親 | 兄弟姉妹 |
---|---|---|---|---|
配偶者と子 | 1/2 | 残りを子が等分 | ||
配偶者と親 | 2/3 | ‐ | 1/3 | ‐ |
配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 | ‐ | ‐ | 1/4 |
子のみ(配偶者なし) | ‐ | 子が等分 | ||
配偶者のみ(他なし) | 全部 | ‐ | ‐ | ‐ |
代襲相続(たいしゅうそうぞく)とは?
例えば本来の相続人(子)が先に亡くなっている場合、その子(被相続人の孫)が代わって相続します。これを代襲相続と言います。
兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合にも、その子(甥や姪)が代襲する場合があります。
相続の注意点
- 相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかった扱いになります(代襲不可)。
- 法定相続分はあくまで基準であり、遺産分割協議により変更することも可能です。
- 「遺言書」がある場合は、その内容が優先されます(ただし遺留分には注意)。
実例
たとえば、遺産が1,200万円あり、相続人が「配偶者と子2人」の場合:
- 配偶者:600万円(1/2)
- 子1人あたり:300万円ずつ(1/2 ÷ 2)
法定相続 まとめ
- 法定相続は、トラブルを防ぐための民法上の分配ルール
- 遺言書がない場合はこの割合に従って分ける
- 配偶者は常に相続人
- 子・親・兄弟姉妹は順位によって変わる
- 必ずしもその通りに分けなければいけないわけではなく、話し合いで調整可能
遺言書作成のタイミングと注意点
- 体調が悪化する前の元気なうちに作成を
- 法律改正(例:2020年施行の自筆証書遺言の法務局保管制度)にも注意
- 不安があれば弁護士や行政書士への相談を