医療費の負担を軽減してくれる「高額療養費制度」。被保険者が亡くなった後でも、生前に支払った医療費が限度額を超えていれば、その差額を「相続人」が還付請求することができます。
しかし、死後の手続きは通常と異なり、受け取り方法や税金の扱いなど、注意すべき点がいくつかあります。この記事では、手続きの進め方から「損をしないためのポイント」まで徹底解説します。
亡くなった後でも「高額療養費」は請求できる
高額療養費は、本人が亡くなった後でも、親族(相続人)が代わって請求する権利があります。これは「未支給の給付」として扱われ、遺族の生活を支える大切な資金となります。
還付の対象となるケース
- 亡くなる直前に入院・手術を行い、窓口で多額の支払いを済ませていた場合。
- 生前に「限度額適用認定証」を提示しておらず、後から還付を受ける予定だった場合。
誰が受け取れる?「受取人」の優先順位と相続
亡くなった方の還付金を受け取れるのは、原則として「相続人」です。
相続との関係(信頼性を高める重要知識)
ここで注意が必要なのは、この還付金は「亡くなった方の相続財産(遺産)」とみなされる点です。
- 受取人の代表: 相続人が複数いる場合は、その中から「代表受取人」を1人決め、他の相続人からの同意書(委任状)を求められることが一般的です。
- 相続放棄をする場合: 相続放棄を検討している方は注意が必要です。還付金を受け取ってしまうと「相続を承認した」とみなされ、借金などの負債も引き継がなければならなくなるリスクがあります。
申請に必要な書類と手続きの流れ
申請先は、亡くなった方が加入していた健康保険(国民健康保険、後期高齢者医療制度、社会保険など)の窓口です。
必要なものリスト
- 高額療養費支給申請書(窓口または郵送)
- 亡くなった方の保険証(返還済みでない場合)
- 医療費の領収書(原本)
- 振込先口座がわかるもの(代表相続人の通帳など)
- 相続権を確認できる書類(戸籍謄本など)
- 誓約書または委任状(相続人が複数の場合)
知っておかないと損をする「時効」と「税金」
① 申請期限(時効)は2年間
還付請求ができる期限は、「診療を受けた月の翌月の初日」から2年間です。葬儀後の慌ただしい時期を過ぎてからでも間に合いますが、領収書を紛失する前に早めに手続きしましょう。
② 所得税の確定申告(医療費控除)との併用
還付を受けた高額療養費は、亡くなった方の「準確定申告」における医療費控除の計算において、支払った医療費から差し引かなければなりません。 申告漏れがあると後から修正が必要になるため注意してください。
よくある質問(FAQ)
Q:亡くなった本人名義の口座に振り込んでもらえますか? A: できません。本人が亡くなった時点でその口座は凍結されるため、必ず「相続人代表者」などの個人口座を指定する必要があります。
Q:領収書を紛失してしまったのですが、申請できますか? A: 病院に「領収明細書」や「支払い証明書」の発行(有料の場合が多い)を依頼することで代用できる場合があります。まずは加入していた保険窓口に相談してください。
Q:自治体から「支給申請のお知らせ」が届かないのですが? A: 国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合、診療から3〜4ヶ月後に通知が届くのが一般的です。しかし、自治体によっては通知を送らない場合もあるため、高額な医療費を支払った覚えがあるなら自ら問い合わせるのが確実です。
Q:葬儀費用も高額療養費の対象になりますか? A: いいえ、対象外です。高額療養費はあくまで「保険診療の対象となる医療費」に対する制度です。葬儀に関しては、別途「葬祭費」や「埋葬料」を請求できる制度があります。
まとめ:複雑な手続きこそ専門家や窓口へ
亡くなった後の高額療養費請求は、単なる事務手続きではなく、相続に関わる重要な問題です。特に金額が大きい場合や、親族間での話し合いが必要な場合は、早めに自治体の窓口や専門家へ相談することをお勧めします。
この還付金は、故人が家族のために残した大切なお金です。漏れなく手続きを行い、適切に受け取りましょう。

